地域医療問題を考える
|
|
「地域医療問題を考える」
8月11〜12日、仙台まで高速バスで2時間半、仙台駅となりのTKP仙台カンファレンスセンターでの地方議員研究会に参加しました。
”地域医療再生への処方箋”というエスプリの効いた?テーマで、・なぜ医師不足が起きるのか。・これから地域医療に起きること〜社会保障と税の一体改革の意義と地域への影響。・自治体議員の果たすべき役割という内容でした。
私としては「天下の悪法」としか捉えられない”社会保障と税の一体改革”について「意義」っ?と目くじらを立てたくなる項目だったので「世のおおかたの人々はどう考えているのか」を勉強する必要があると思っての研修参加です。
講師の伊関友伸城西大学経営学部教授は、県職員の経験をお持ちで、自治体病院の経営変革・地域医療問題などの行政学がご専門であり、全国の地方にある様々な医療機関を問題点や特徴まで実に詳しくご存じの方でした。私が一番うれしかったのは、資料がパワーポイントとほぼ同じで、とても大きな文字だということです!。

初日は「地域医療再生」についてでした。
@全国で深刻な医師不足(県庁所在地以外で、昔は拠点病院だった所が特に深刻=横手市でも)
…原因(1)1982(昭和57)年から医学部定員の削減を閣議決定(第二臨調に呼応して)→医療崩壊が進み2008(平成21)年に医学部定員増を閣議決定しかし成果は10年後。
(2)医療の高度・専門化:これ自体は良いことだが、20年前は1人の医師が患者の病気を診ていた→現在は複数の専門科の医師が1人の患者の疾病を診る(心臓疾患を併発した糖尿病患者に対し、昔は内科医1人→今は糖尿病専門医+心臓病専門医+放射線専門医)
(3)人口の急激な高齢化:長期間医療を受ける慢性疾患が多い・病院死の増加=医療者の負担増。
(4)インフォームドコンセント:大切なことだが、患者への充分な説明と同意の必要性は医師の仕事を増やす。
(5)女性医師の増加:男女共同参画の立場からは当然だが、臨床現場から離れなくてもすむような社会構造(男女ともにワークライフバランスの保障)が必須。
(6)劣悪な労働環境:過労死寸前で18%の医師が精神的に追い込まれている。
(7)新臨床研修制度(2004年):新人医師が研修を受けたい病院を選び、病院側の希望とつき合わせる制度が新たに導入→多くが都会の大病院を研修先に選ぶ結果に→医療効果が明確な急性期を指向する医師は、高度・専門化に対応し、医師数の多い病院に集まる→新しい知識や技術を身に着け、宿直等に余裕あり→病院の二極化!しかし研修2年目に一か月間、地域医療実習の研修があるので、自治体がこの点をもっと位置づけるべきである。
(8)国民の医療への不理解(健康について不勉強な患者・国民・コンビニ医療指向):タクシー代わりの救急車使用・自由気ままに休日や夜間診察を受ける等々。
A自治体病院・診療所の存在意義
(1)2009年10月の全国の医療施設数状況は8733病院中、自治体病院は11.5%。しかし基幹災害医療センターやへき地医療拠点病院、第1種感染症指定医療機関は50%以上が自治体病院が担っている。
(2)医療崩壊の解決策として2008年から一般会計繰り入れが1000億円増額→指定管理か民間への方向:自治体病院は必要なのか?
(3)病院の提供する医療サービスの性格が変わってきている:昭和時代は薬や注射などに診療報酬が重点的に配分された→できるだけ人を減らして利益を得る。現在は診療報酬は技術に対して適切に配分されることを目指している→サービスを提供して収益を上げる業態にする→人を雇わなければ利益が得られない。
B医師が勤務したくなるような地域にするには
(1)行う医療を明確にする(あれもこれも求めない)
(2)過酷過ぎない勤務と適切な報酬を保障する
(3)医療技術を学べる、自己が成長できる、専門医の資格が取れる施設にする
(4)住民が感謝し、適切な受診行動をする…現場で働く意思の話を良く聴かなければ医療機能の再編はうまくいかない。住民や行政が勝手に推進や反対の議論をすることはNG.
*地域の病院で「総合診療医」を育てる…地域住民の生活習慣を含めた身体の全てを診る能力・住民の健康に関して住民や行政に働きかけ、連携していく力、社会的なコミュニケーション能力等々は、地域の病院で勤務することで身に着けることができる。
C住民も地域医療の当事者:住民の不安は、政治・行政・コミュニティが解決すべきものである。
(1)不安・無関心・他人任せをなくしていくためには住民自身が自分の体や病気について感心を持つ。医療や健康について学ぶ仲間を持つ。
(2)地域医療の再生は民主主義の再生に繋がる…自分たちの健康に関することだから、きちんとした情報提供と住民の間の議論があれば、人々は節度ある行動をする可能性がある→地域の民主主義の再生〜〜という流れで学びました。
急性期・亜急性期の総合病院を3つ有する我が横手市。すみわけを明確にし、長野県をモデルとする地域医療・健康推進を徹底的に実践することは可能のはずです。行政も議会も住民みんなで本腰を入れて取り組む時だと思いました。 |